有害な化学物質とは?

  2004年にWWFが、ホッキョクグマの体内から有害化学物質Wが検出されたとの報告を行いました。それによれば変圧器にもよく使われるPCBや日本でも非常によく使われていた(1970年使用禁止となっている)DDTが高濃度で体内に蓄積されていたため、ホッキョクグマの内分泌に異常をきたし、雌雄同体の個体が生まれたり、免疫力低下などを引き起こしていたことがわかりました。都市圏から遠く離れた北極でこのような有害化学物質が生物の体内から発見されたことは、容易に分解されないPopsの特性と食物連鎖による生物濃縮が原因と見られています。

 Pops(残留性有機汚染物質)の特徴

 1、環境中に長時間残存する。(化学的安定性が高いため)

2、大気や水を媒介として、地球規模で移動する。(半揮発性でバッタ効果で地球上を巡る)

3、脂溶性が高いため生体内に濃縮・蓄積して健康被害をもたらす可能性が高い。 (生物濃縮する)

 PCBDDT、ダイオキシンなど12化合物(群)あります。

12化合物(群)中、9種類が農薬です。 2004年に締結されたPOPs条約(ストックホルム条約)で製造・使用、輸出入の禁止されましたが以前環境中に残留しています。また、在庫となった物質は締結国以外に輸出されたり、環境中に不法投棄されているものもあるようです。

 

 【チッソ水俣病とホッキョクグマ問題】

 1956年におきたチッソ水俣病の原因は、メチル水銀でした。この問題はホッキョクグマの問題とは共通点があります。
そ れは、有害化学物質と食物連鎖による生物濃縮という意味で同様ということです。水俣病は、チッソ水俣工場が垂れ流した排水中に含まれるメチル水銀(種の殺菌剤)の生成過程でつくられたもの)が、水俣湾から不知火海に広がり、食物連鎖によって濃縮された魚介類を食べたことによるメチル水銀中毒症です。 環境汚染による食物連鎖により引き起こされた人類史上最初の病気であり、「公害の原点」といわれる。(2009年9月4日朝日新聞)

 ホッキョクグマ問題も有害化学物質による環境や生体汚染について考える上で全く同じメカニズムの問題です。平成25年5月22日に「プランクトンにセシウム」と題される記事が掲載されました(河北新報)。下の図をご覧ください(図は河北新報記事より転載)。太平洋沖10地点の動物プランクトンから平均8.2〜10.5ベクレル/kgのセシウムが検出されたというものです。「オーガニックコーディネーター公式テスト第2章補講『食品と放射能』」で 予測していたことですが、食物連鎖による生物濃縮が始まっています。
セシウム137生物濃縮の始まり■関連情報「残留農薬などのADIの計算方法」はこちらを⇒

エコチル調査

 私達の生活環境の中には有害化学物質が満ち満ちています。特に近年、子どもに対する環境リスクが増大しているとの報告が相次いで出され、環境省では2010(平成22)年、子どもの健康と環境に関する全国調査を始めました。この調査のことを「ECO & CHILD」からとって「エコチル調査」と言います。その目的は、

   <胎児期から小児期にかけての化学物質曝露をはじめとする環境因子が、妊娠・生殖、先天奇形、
   精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等に影響を与えているのではないか >

という仮説に立って妊娠初期から子どもが13歳になるまで追跡調査を行うという大規模なものです。最低でも10万人規模の調査を行うことになっています。
 チッソ水俣病でも明らかなように、胎児は母乳や胎盤を通して栄養も有害なものも取り込んでしまいます。その結果、母体だけでなく生まれてきたあかちゃんに重大な影響が出ました。

 下の図は、エコチル調査の資料からの転載です。

   

     

       

 原因不明の様々な病気や症状は私たちの物質的豊かさが増えるのと相まって増えています。その原因を突き止めようとする試みは端緒についたばかりですが、その成果が上がることを願わずにはおれません。

■関連資料はこちらからご覧いただけます。
@ 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)基本計画(環境省)

Aエコチル調査仮設集(環境省)

Bエコチル調査ユニットセンター一覧(地域の拠点病院)