協議会の設立主旨並びに活動について


日本オーガニック推進協議会 理事長          山崎 泉

ア・プリオリな「自然」はなく、理想とする「自然」は獲得するものである

 「水惑星」地球・・・外気圏、熱圏、中間圏、成層圏、対流圏といった多重バリアに保護され、大気、大地、水からなるジオスフェア(地球環境)の上にバイアオスフェア(生命圏)を形成した稀なる惑星・地球。そして、大気、陸地、海洋の隅々まで生命に満ち溢れる生物圏は様々な有機生命体の脆いバランスによって辛うじて存続している。私たちは、その生物圏の一部で、固体としては多寡だか100年に満たない生を点す「生理的自然体」としての人類でしかない。  

 50億年前の地球生誕から遥かなる現在、奇跡的な有機的偶然の産物として生命を受けた私たち人類は、食物連鎖の頂上に立つ生物として、まさに私たち生命の母体である地球そのものを滅ぼそうとしている。  

2005年現在、地球人口は65億人を突破し、2050年には 91 億人に達する見込みといわれている。人類の経済活動による環境破壊をさらに加速させる要因として、この爆発的な人口増大、その人類が生存するための一次的基礎的エネルギーとしての食糧問題が重要な要因となることは明白である。そうなったとき、一体、91億人の人類を賄えるものだろうか。仮に経済活動を抑制したとしても食糧問題が解決するものではない。 化石エネルギーの問題の次は、この膨大に消費される食糧生産のための「水戦争」が起きるのではないかとすら言われている。「農」と「環境」は切っても切れない関係である。  

 わが国においては、高度経済成長期に端を発した様々な公害問題が、環境破壊とともに生活問題としてもますます深刻になってきている。『複合汚染』は改善されるどころか静かに深く進行しており、新たな「複合汚染」を生み出し、花粉症やアトピー更には BSE や鳥インフルエンザと形を変え、私たちの生存そのものを脅かす事態にいたっている。  

 私たちは今こそ「生命」の原点を見つめ直し、喪われた「自然」を獲得することを当為とすべきであると考える。

 このような状況を踏まえて、私たちは「生きとし生けるもの」すべての意味を問い直し、この生物圏における「生物多様性」の重要を理解し、私たちの生存に欠かせぬ「一次的基礎的エネルギー」である健康で安全な「食」の問題に真剣に取り組むものである。とりわけ、食物連鎖の頂点にたつ私たちにとって、各個人が、摂取する「食」の安全についての理解・認識を深めるために、最新の情報を広く普及していくことがますます大切なことになってきた。

 現在、私たちは毎日のように「食」に関する情報を目にしている。「食育基本法」「オーガニック」「有機 JAS 」「製品不当表示」「 JAS 」「生産情報 JAS 規格」「トレーサビリティ」「 ISO22000 」「 HACCP 」「 BSE トレーサビリティ法」「無農薬」「低農薬」「高度化基準」「 CODEX 」「生物多様性」「 WTO 」「スローフード」等々、日々目にする言葉であるにも拘わらずその正確な意味を知らない人がほとんどであると言っても過言ではない。また、例としてあげた言葉が実際、どのような関連性にあるのかについてはますます分かりにくくなっている。

 私たちは、この食に関する制度や基準・その内容をできるだけ正確に知り、理解し、生産の現場や加工・流通においてどのような努力がなされ、食卓に上がるのか、それぞれの立場で考え、努力し、協力しあっていかなければならない。  「日本オーガニック推進協議会」は、上記の視点に立って、環境の保全・食の安全についての情報・知識を広く広め、様々な啓蒙事業を行い、健康で安全な大地の復活と、明るく安心安全な生活を続けられる、21世紀の日本に寄与することを目的として設立されたものである。

 「日本オーガニック推進協議会」の「オーガニック」とは、決して狭義のものではなく、先述した「水惑星」地球の上に生きとし生ける人類を初めとした多様な生物、またその営みにより調和を保ち、今日まで生命を繋いできた「有機的調和」全体を指す言葉として用いられる。