最近、ナノ化粧品と謳っている化粧品をよく見かけますね。日焼け止めやファンデーションで極微粒子のナノ(ナノは10億分の1メートルですから0.000001ミリのことです)の大きさの材料を使った製品のことをいいます。

【ナノ化粧品の例】

 花王の「ソフィーナライズUVカットミルク」
 「UV-Aをカットする酸化亜鉛を、柔らかい透明球状ポリマーの中に立体的に配合した3D-UVカットポ リマーにより、サラサラの使用感と透明度を実現しているのにもかかわらず、高いUVカット効果が得られる。」

 カネボウ化粧品の「アリィーEXカット」
 「成分が散逸しやすい超微粒子酸化チタン素材とより小さな『超微粒子ナノバリアパウダー』を組み合わせて製品化。(ナノシールド処方)透明なのに水や汗に 濡れても強力な紫外線カット機能を保持。」

 資生堂「アネッサネオサンスクーンEX」
 
「日焼け止め効 果のある酸化亜鉛をナノテクで花びらのような形に結晶化。肌の上で均一になめらかに広がり、高い透明度が得られる。」

 コーセーの「ルティーナライトオンパ クトSF」
 「透明度が高く、UV効果は高いが、キシキシしたり、白浮きしたりしやすいという欠点をもつ酸化チタンと、安定性が高く、肌に柔 らかくなじむシリコンを、ナノレベルで均一に複合化した『スーパーモレキュラーハイブリットパウダー』を配合。このパウダーはたくさん穴が開いたような構 造となっていて、皮脂吸収効果も高い。」

 資生堂「プラウディアクリアクオリティーパクトUV」および「プラウディアリアルフィットパウダリー」 「酸化チタンを厚さ90〜100nmの薄 膜状に生成した雲母チタン粉末の表面に酸化亜鉛を直径30〜70nmでファイバー状に結晶成長させ、細かな羽毛状に被覆している。このような表面加工によ り肌に入射する光を拡散反射特性させ、透明感のある自然なつやが得られる。また皮脂を表面にパウダー状に固めることにより、皮脂がべたつかず、サラッとし て効果が持続する。

 ビタミンC60バイオリサーチ開発の美白化粧品
 フラーレン(C60)を配合し、紫外線などによって発生する活性酸素の活動を皮膚から浸透した水溶性フラーレンが抑制する。そのためアンチエイジング効果があり、また皮膚がんの転移・拡大も防止する効果も期待される。

 ファンケル化粧品の「マイルドクレンジングオイル」
 「ナノテクだから、こすらないでも、するんと落ちる」

 

経皮吸収とナノ化粧品


 以下「オーガニックコーディネーター公式テキスト」第6章オーガニック・コスメティックの項より引用

      

 

 上の図は皮膚の構造図です。
 皮膚は、人間の体の一番外側の部分で、体の表面を覆う表皮と、そのすぐ下にある真皮、さらにその下にある皮下組織の3層に分かれています。表皮は外側から「角質層」「顆粒層」「有棘細胞層」「基底細胞層」に分かれています。角質層はケラチンやセラミドといった物質からできていて、層を重ね、外部からの物質の侵入を防ぐ働きがあります。表皮の角質層が体内と体外を隔てる壁の役割を果し、体内の水分の蒸発を防ぐと同時に外敵や異物の侵入を防いでいます。表皮には血管がなく、皮膚の表面を浅く傷つけても血が出ないのはそのためです。基本的には、この角質層によって有害化学物質は遮断されるのですが、脂溶性のある経皮毒性化学物質はこのバリアをくぐり抜けます。その内側の真皮には毛細血管があり、ここまで侵入して血管に入った物質は、血流に乗って全身に運ばれることになります。 また皮下組織は脂肪を多く含んでいますが、この脂肪に経皮毒性のある有害化学物質がたまっていくのです。
 

 これだけ防御していれば完璧のように思えます。しかし図からわかるように完璧な防御のようにも見えるこのブロックの壁ですが、実際には微量物質はブロックのすき間をくぐり抜けて体内に入ることができます。シップ剤が利くのはそのためです。パッチ式の咳止めもそうです。心臓病の治療に用いられるニトログリセリンがあります。ニトログリセリンのパッチを皮膚に貼ると、分子の小さいニトログリセリンは表皮をくぐり抜けて容易に体内に吸収され、血流に乗って全身に行き渡ります。
 同様に、化粧品の原料も分子量が小さいものは角質のブロックをくぐり抜けて体内に吸収されます。有害で分子量の小さい物質が製品に含まれていれば、それは体内に侵入して蓄積され、健康被害を引き起こすおそれがあります。分子の大きいコラーゲンのような成分は、肌につけても表皮にブロックされて体内に吸収されることはありません。
 

注意点:経皮吸収の最大のポイントはその物質が脂溶性が高いことですが、分子量が小さいことも条件です。ただ、分子量が小さければすべて経皮吸収されるかというとそうではなく、「親和性」(特定の原子や分子が結びつきやすい性質)が高いか低いかで、皮膚の表面で弾かれてしまうものもあります。分子は水素や炭素、窒素、酸素といった原子がくっついて出来ていますが、 分子量とは、そのくっついているものをすべて足した重さ(質量)となります。 (以上、「公式テキスト」より一部引用)

 通常、皮膚の角質層は異物の侵入を防いでいますが、化粧品に含まれる乳化剤の合成界面活性剤などによりそのバリアが破壊されることがあります。

 脂溶性のあるものが全て皮膚内に入り込むわけではありません。なぜならば皮膚に浸透できるのは分子量が600以下と言われており、ヒアルロン酸やコラーゲンなどは分子構造が100万、30万と大きくそのままでは浸透しません。ですから脂溶性があるからといって必ずしも皮膚内には浸透しません。 怖いのは合成仮面活性剤です。皮膚のバリアである角質を破壊するのでそこから大きい分子構造の物質も入り込んでしまうのです。余談ですが旧指定成分のようにアレルギーを引き起こす物質は皮膚内に入ってアレルギーを引き起こすということですから物質量が600以下と考えてよいでしょう。

 ここまで来ると何を言いたいかわかりますね。

―平成24年2月7日朝新聞から引用します。
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 ナノ材料、国が安全評価へ 吸引で健康被害の懸念
 日用品に広く使われているナノ材料について、国は、製造現場で作業員への安全性を調べ、規制が必要か検討する。また、一般の人がどの程度、体内に取り込むのか、健康への影響がないのか調べる。動物実験では、発がん性や胎児への影響を示す結果が相次いでいるためだ。

ナノ材料は一般的に、直径が100ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の物質をいう。工業製品や化粧品、食品、医薬品などに使われている。炭素原子が筒状につながったカーボンナノチューブは、半導体や燃料電池などに、二酸化チタンやシリカは日焼け止めやファンデーションなどに使われている。

一方で近年、動物実験ではナノ材料の安全性を疑わせる結果が相次いでいる。

国立医薬品食品衛生研究所などは2008年、カーボンナノチューブを腹に注射したマウス16匹のうち14匹が、がんの一種の中皮腫になったと発表した。アスベストと形が似ていることが影響すると指摘された