私たちが生きていくためには、食料が必要です。

当たり前のことですね。

食べなければ命はありません。その命の糧を食べることでかえって健康を害するとすればおかしなことですね。食料を生産するために使用される農薬が人体に環境にどれだけ負荷をかけるものなのか考えてみましょう。
そう、昔から農業は環境に負荷をかけるものだったのでしょうか?

 いいえ、違います。

  第二次世界大戦前、国内において化学農薬の使用はほんど実用化されてませんでした。第二次大戦後、食糧難の時代に食料安定生産のため次々と新しい農薬が農産物の生産現場で使用されるようになりました。その後、食料は安定しました。

  も ともと農業は、自然界の生物の営みの恩恵を受けて食物連鎖や窒素循環などの物質循環による自然の共生によって成り立っていました。貧しい土壌には、たい肥 をやったり、腐葉土を足したりしながら、土地土地にあった作物の生産を行ってきました。雨量や気候、土壌の質などによって適作を工夫して行ってきたわけで す。

  それが、食糧大量消費時代を迎え、栽培の効率化を図るため、また過酷な労働条件を軽減するために農薬や化学肥料を大量に使うようになりました。 結果、私たちの食糧は効率的に作ることができるようになり、農作業の労力は軽減され、安定した食糧を確保することが可能となったわけです。

  ただその裏側で、土壌が化学物質に汚染され、それを土から水から栄養を吸い上げて育った作物や環境に農業で使用された化学物質が残留することになりました。

 1961年に、1957年から使われはじめた除草剤PCPによる魚の大量死が社会問題となり、農薬が自然環境に大きな害を及ぼす可能性について広く知られることになりました。

 あるいは地下水に浸透したり、農業排水から河川や湖沼、海洋へ移動し、食物連鎖により、最終的に生物濃縮されて私たちの体内に摂取されるわけです。

 その反省もあり、「土壌の性質に由来する農地の生産力」を発揮させるためにも、健康な土壌に戻しながらその土地土地に適した作物を自然生態系の食物連と鎖窒素循環の仕組みを大いに活用して環境に負荷を掛けない農業生産を行なおう、というのが有機農業なのです。

 

 今、やらねばならないのは、環境保全型農業です。

 有機JAS制定は2001年ですが2006年には「有機農業の推進に関する法律(通称:有機農業推進法)が制定され日本の農業も本格的に環境保全型農業にシフトされたのです。

 

図

 

※日本よりヨーロッパ諸国でいち早く有機農業が推進された理由として、第二次世界大戦後の食糧不足から工業的な農業を推進した結果、やはり同様の問題がおこり、それと同時に工場の排出する有害物質(酸性雨)によりヨーロッパの森林が深刻な被害を受けたというのが理由です 。