<%@LANGUAGE="JAVASCRIPT" CODEPAGE="65001"%> 「有機スピルリナ」について受講者からの質問への回答

「有機スピルリナ」について受講者からの質問への回答 

 (お断り:令和4年(2022)1月から「有機藻類」の認証が始まりましたがこの記事はその前のものです。)                                
                                                                                   平成27年12月17日記 山崎 泉記

「有機スピルリナ」について。
最近、受講者から「有機スピルリナ」についての質問が相次いでいます。本講座を受講された方は、有機農産物の対象は「土」の上で作られたものであり、水耕栽培やわさびなどのように清流で育てられたものは有機JASの対象外であり、「有機の規格」がないことを知っています。
しかし、最近、健康食品として「有機スピルリナ」の表示をした商品が広く出回っていることから若干の混乱が生じているようです。
スピルリナは藻類ですので当然、水の中で育ちます。スピルリナと似たようなものでよく知られているものに「クロレラ」があります。クロレラは直径3~8μm(ミクロン)のほぼ球形の単細胞緑藻で、主に湖沼や河川などに生息しています。スピルリナやクロレラは植物プランクトンの一種です。
以下、スピルリナについて「ウィキペディア」から抜粋して引用させていただきます。

スピルリナ:色素原料や健康食品として利用される熱帯性の藻類。アフリカや中南米の湖に古くから自生しており現地の人々の貴重な食糧源として利用されてきた。フラミンゴの主食としても知られる。食品としての工業的生産は、日本の大日本インキ化学工業(現DIC) が1978年にタイのバンコク郊外に人工池による培養工場を建設して販売したのが世界最初とされている。
応用
乾燥したスピルリナは、タンパク質を約60%含み、ビタミン、ミネラル、多糖類(食物繊維)、クロロフィルなどを含む。中でもカロテノイド系色素のβ-カロテン、ゼアキサンチンを多く含み、その抗酸化作用が注目されている。クロレラと比較し、β-カロテン含量が多く、消化吸収性が良いのが特徴である。なお、これを主食とするフラミンゴの体色が赤いのは沈着したβ-カロテンのためである。 橙黄色のカロテノイドのほか、緑色の葉緑素(クロロフィルa)、青色のフィコシアニンの3種の色素を含む。フィコシアニンは藍藻類の名前の由来ともなっている鮮やかな青色を呈するため、天然の食用色素として冷菓・乳製品・粉末ジュース・飲料・ガムなどに利用されている。

有効性

ヒトにおけるスピルリナの有効性に関し、これまでのところ十分なデータは確認されていない。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b2/Spirulina_tablets.jpg/220px-Spirulina_tablets.jpgSpirul3.jpg

 

写真右:スピルリナ

 

 

右左:タブレット錠にしたもの
以上、「ウィキペディア」より

 

有機スピルリナの認証について。
【結論】
結論から先に述べますと、日本産の有機スピルリナはありえません。また国際的にオーサライズされた有機スピルリナは海外でも存在しません。あくまでスピルリナ等の藻類の有機認証は「任意」であり、消費者がその「有機の規格」を知りたければ認証元(海外)へ直接問い合わせをするしかありません。
以下、その理由について解説します。

 冒頭で触れたように受講者の方は、「土」の上で生産されたものでなければオーガニック食品の規格である有機JASの対象にはならない、したがって藻類であるスピルリナで有機認定されたものはありえないことになります。ところが最近は「有機スピルリナ」と表示して販売されている商品が良く見かけられます。
中には、パンフレットに商品の説明文に付して有機JASマークを表示しているものも見かけます。しかし、よく見ると有機JASマークの下に「登録認定機関名」が見当たりません。こういった事例は本講座の課題で「表示違反事例」として学ぶものですね。

 あえて言うまでもありませんが、日本のオーガニック食品の規格である有機JASは食品の国際規格である「Codex」のオーガニック規格に準じて設けられています。換言すれば有機JASの大元はCodexになります。欧米・アジアでも各国のオーガニック食品の規格は全てCodexに基づいています。しかしそのCodexでは藻類や魚介類のオーガニック規格は設けていません。
ここで有機農産物の日本農林規格(有機JAS)の生産の原則をもう一度見てみましょう。

(有機農産物の生産の原則)
第2条有機農産物は、次のいずれかに従い生産することとする。
(1)農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力(きのこ類の生産にあっては農林産物に由来する生産力を含む。)を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産すること。
(2)採取場(自生している農産物を採取する場所をいう。以下同じ)において、採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取すること。

 以下にCodexの有機生産ガイドラインを一部抜粋します。


■有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン(Codex)抜粋(農水省HPより引用)

5.有機農業は、環境を支えるさまざまな手法の一つである。有機生産システムは、社会的、生態的及び経済的に持続可能な、最適な農業生態系の達成を目指す生産の明確で厳密な基準に基づいている。「生物的」及び「生態的」等の用語は、有機的システムをより明確に表現するためにも用いられる。有機的に生産される食品の要件は、生産手順が生産物の識別、表示及び強調表示の本質的部分であるという点で他の農産物の要件とは異なっている
「有機」とは、有機生産規格に従って生産され、正式に設立された認証機関又は当局により認証された生産物であることを意味する表示用語である。有機農業は、外部からの資材の使用を最小限に抑え、化学合成肥料や農薬の使用を避けることを基本としている。一般的な環境汚染により、有機農法が生産物に全く残留がないことを保証することはできないが、大気、土壌及び水の汚染を最小限に抑える手法が用いられている。有機食品の取扱者、加工業者及び小売業者は、有機農産物の信頼性を保つために規格を遵守する。
有機農業の主要目的は、土壌の生物、植物、動物及び人間の相互に依存し合う共同体の健康と生産性を最適化することである。

7.有機農業は、生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システムである。地域によってはその地域に応じた制度が必要であることを考慮しつつ、非農業由来の資材を使用するよりも栽培管理方法の利用を重視する。これは、同システムの枠組みにおいて特有の機能を発揮させるために、化学合成資材を使用することなく、可能な限り、耕種的、生物的及び物理的な手法を用いることによって達成される。有機生産システムは、以下を目的としている。
a)システム全体において生物の多様性を向上させる
b)土壌の生物活性を強化する
c)長期的な土壌の肥沃化を維持する
d)土地に養分を補給するために動植物由来の廃棄物を再利用し、再生不能資源の使用を最小限に抑える
e)地域で確定された農業システムの再生可能な資源に依拠する
f)土壌、水及び大気の健全な利用を促進するとともに、農作業に起因し得るあらゆる形態の汚染を最小限に抑える
g)あらゆる段階において農産物の有機性及び不可欠な品質を維持するために、特に加工方法に慎重を期して農産物を扱う
h)土地の履歴並びに生産される作物及び家畜の種類等、現場特有の要因により決定される、適切な長さの転換期間を経て有機農業を既存の農場において確立する

1章適用の範囲
1.1 本ガイドラインは、有機的な生産方法について言及する表示を付すか、又は付そうとする以下の生産物に適用される。
a) 附属書1及び3に定める生産の原則及び特定の検査規則が導入される場合の未加工の農産物、家畜及び畜産物
b) 上記(a)に由来する食用の農産物加工食品及び畜産物加工食品

1.2 生産物は、広告や商業上の書類を含む表示又は強調表示において、生産物又はその原材料が、「有機」、「バイオダイナミック」、「生物的」、「生態的」等の用語、又は生産物が市場に流通している国において、購入者に当該生産物又はその原材料が有機的な当該生産方法に由来することを示唆するような呼称を含む類似の趣旨の言葉が記載される場合には、有機的な生産方法について言及した表示がなされているとみなされる。

1.3 第1.2項は、このような用語が生産方法と明らかに無関係な場合には適用されない。

1.4 本ガイドラインは、第1.1項に記載の生産物の生産、調製、販売、表示及び検査に適
用されるコーデックス委員会(CAC)の他の規定を損なうことなく適用される。

1.5 遺伝子操作/遺伝子組換生物(GEO/GMO)により生産された全ての原料又は製品は、(栽培、生産又は加工のいずれについても)有機生産の原則に適合しないため、本ガイドラインの下では使用が認められない。

■農林水産省のHPに掲載されている「有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン CAC/GL 32-1999」の6ページ 注釈9に「水産養殖に関する規定は今後策定される」となっています。

有機スピルリナの認証は任意の規格です。その規格を知りたければ、ユーザーが直接認証元へ問い合わせるしかありません。
すでにお分かりのように藻類の有機の規格はCodexでも定めておらず、当然日本でも定めていません。それなのに何故「有機スピルリナ」と表示する商品が存在するのでしょう?
規格が定められていないということは、表示してもJAS法では取り締まることが出来ないということになります。それがホンモノの有機スピルリナであれば良いのですが、ニセモノであった場合には景品表示法で取り締まることしか出来ないのが現状です。
ちなみに、農林水産省の見解は次の通りです。
  ・藻類は有機JASの対象外なので「有機スピルリナ」はあり得ないが、そのエビデンスがしっかりしたものであれば、任意で「有機スピルリナ」と   表示しても表示違反には問えない。しかしそのエビデンス(有機であることの)がしっかりしていることが条件。」
 しかし、「しっかりしたエビデンス」とはどういうものかについては明確な説明はもらえませんでした。
仮にそれがどこかの認定機関が有機であると認証したのであればその認定基準を教えてもらわなければ私たちには確認・判断のしようがありませんね。
先日(平成27年11月30日)パンフレットで「有機スピルリナ」と表示してある商品の販売会社に問い合わせました。その商品の販売会社の答えは次のようなものでした。

・有機JASマークを載せたのは過失であったの問い合わせのあった方には間違いをお詫びしている。

・藻類なので有機JASマークは貼れないが「有機スピルリナ」であることは間違いない。認定機関はアメリカのCCOF(California Certified Organic Farmers)というところである。原産地はインドとか他にもある。(もっとも認定機関名を教えてくれたのはこの方ではなく商品サポートの方でした。CCOF認証と聞いていますがと伝えたところ「誰から聞きました?」が第一声でしたので付け加えておきます。)

ここから先が驚く回答でした。
認定機関の認証規格を教えて欲しい、と尋ねたところ「それは『コンフィデンシャ(非 公開・機密)』であるので教えられない」・・・????、予期せぬ答えに一瞬言葉を失い ました。しかも後をついで出てきた言葉は「知りたいのなら自分でその認定機関のHPで 確認してください」、はっ? 驚いて言葉もありませんでした。普通、輸入して販売して るのですから販売者はお客さんに教えてくれるものとばかり思っていましたのでこの回 答には呆れ返りました。ちなみにこの会社の商品はこの文章を書いている私の近親者が 定期的に色んな商品を購入してるので良く知っている会社でした。その旨も伝え、決し てクレームではなく、それが本当にしっかりしたオーガニック規格で培養もしくは採取 されたものなのか知りたいので「水産物の有機規格」について教えて欲しいとしつこく 尋ねましたが、「コンフィデンシャルで教えられない、当該認定機関のHPなり、直接問 い合わせるなりして自分で調べてください」の一点張り。挙句は「繊細な内容なので本 社まで来てください」でした。企業コンプライアンスに欠ける対応ですね。

下のマークはCCOFの認証マーク

https://www.ccof.org/sites/default/files/styles/original/public/ccof_logo_4color.jpghttps://encrypted-tbn2.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcRMG-sdAzklhjZgE3GnOincmxM_MkU4WypeDTNoxlHdWIcIEXOshy8PhQ

 

 

 

 仕方なく自分でCCOFのHPを調べました。確かに食品のオーガニック認定機関です。有機農産物、有機畜産物、有機加工食品、有機飼料の認証を行っているしっかりしたところのように見えます。しかし、HPの何処にも水産物の有機認証を行っている証拠は見つけられませんでした。
Codexでも水産物の有機認証の検討を行っているようですが規格として策定の予定は今のところ全く見えてません。

 したがってこういった商品を購入する場合には自己責任で購入する、と言うことになります。
最近、オーガニック食品を販売している企業の方々の受講者が増えてきています。企業コンプライアンスがしっかりしている企業は、販売窓口担当の方でも説明できるように教育を受けています。それに比べ当該販売会社の対応はレベルが低いと言わざるを得ません。
輸入して売るだけなら小分け業者の認定は必要ありませんので、有機JASの知識もないのかも知れませんが、「有機」であることを強調して販売しているわけですからしっかり説明できるようにしていただきたいものだと思います。

受講者には蛇足ですが有機加工食品の規格概要を図にします。

            

以上の説明でご不明点がございましたら日本オーガニック推進協議会宛にお問合せください。

追記:平成28年3月20日 
    前述した「有機スピルリナ」を販売する会社のパンフレットの今年度版を確認しました。以前は「有機スピルリナ」の写真説明の所に有JASマークを載せていましたが、今年度版では有機JASマークを削除していました。